旅のヒント
vol.77
もくじ
沖縄を代表するお酒のひとつ泡盛。沖縄の人たちにとってお酒は、人が集まって楽しみながら縁を育んでいく欠かせないものです。そんな泡盛について、ザ・ビーチリゾート瀬底・ヒルトンクラブから車で約1時間、世界自然遺産にも登録された沖縄北部・やんばるの地で70年以上も泡盛を造り続けるやんばる酒造の酒造所見学レポートを基にご紹介します。 酒造の方に泡盛初心者向けの飲み方も伺ったので、リゾートのテラスで琉球グラスに入れた泡盛をじっくり楽しむのも良さそうです。
人と人を繋ぐおもてなしのお酒・泡盛とは
島酒とも呼ばれ、沖縄特有のお酒である泡盛。人と集まり、語らうのが好きな沖縄の人々にとって、集まりの場に必ずと言ってよいほど登場するお酒です。
泡盛はタイ米を原料とした蒸留酒で、黒麹菌を使っているのが特徴。製造工程にも特徴があり、同じ蒸留酒である焼酎とも異なります。詳しい工程はこのあとの酒造所見学で紹介しますが、沖縄県内にはなんと47もの酒造会社があり※、それぞれが地元の方々に愛される泡盛造りをしています。
どの酒造会社も、それほど大きなところではありません。本土に流通しない泡盛も数多くあり、沖縄にいるうちに色々と試してみると、それぞれの泡盛の名前に込められた願いや、味わいに地域性が感じられ、より一層、沖縄を深く知ることができるかもしれません。
※沖縄県酒造組合に登録の酒造会社数
okinawa-awamori.or.jp/distilleries
飲むだけじゃない。調味料やケーキなど食べられる泡盛
泡盛は蒸留したお酒を水で度数調整し、熟成させてから出荷されます。酒造会社によっては、発酵の工程で独自の工夫をしていて、一般的には1回の蒸留を2回にしてスッキリさせたものを造るなど、それぞれ特徴のある泡盛を揃えています。これに加え、熟成期間によっても味わいが変わるので、それらの原酒とも言える泡盛をブレンドすることでバリエーションがさらに広がっていきます。
熟成期間が3年を超えると「古酒(クースー)」と呼ばれ、ウイスキーのように何十年と保管されているものもあるほどです。
このほか、泡盛に島唐辛子を漬け込んだ調味料「コーレーグース」など、調味料にも泡盛は使われています。
手軽につくれる自家製もおすすめ。沖縄の激辛調味料「コーレーグース」
泡盛はお酒として飲むだけではありません。その代表的なものが島唐辛子を漬け込んだ泡盛の調味料「コーレーグース」。アルコールに辛み成分のカプサイシンが溶け出し、オイルと違って直接舌に届くような辛さがあります。ソーキそばやスープ、炒め物などにおすすめです。アルコールが飛んでいないので、車の運転前には使わないようご注意を。
沖縄県内のスーパーやお土産店でも購入できますが、せっかくなら作ってみるのはいかが? 漬け込む泡盛によって味わいが変わるので、いくつか作ってみるのも良いでしょう。
島唐辛子と泡盛をセットで販売するコーレーグースキットのようなモノもあるほか、道の駅や直売所などで島唐辛子が売っていたら購入して作るのも良さそうです。
スイーツにもぴったり。ふわふわ泡盛ケーキ
甘いものがお好きな方には、泡盛ケーキをどうぞ。沖縄県最北端にある泡盛酒造メーカーのやんばる酒造では、10年ものの古酒の泡盛と卵をたっぷり使ったケーキを開発。ふわふわな食感と泡盛の風味が口の中に広がります。このケーキを食べながらゆっくりとコーヒーを楽しむのもおすすめですが、敢えて泡盛とペアリングしてみても間違いなしです。
こちらのケーキもコーレーグース同じくアルコールは飛んでいないため、大人限定のスイーツです。お子様や運転予定の方も食べないようご注意ください。
沖縄最北の泡盛酒造会社・やんばる酒造で酒蔵見学
1日2組、試飲・お土産付きで泡盛を学ぶ
やんばる酒造は、沖縄本島最北端にある創業70年以上の酒造メーカー。その成り立ちは珍しく、1950年に大宜味村の田嘉里(たかざと)地区で、地域の人たちが「自分たちが飲むお酒は自分たちで造りたい」と出資し合い「田嘉里酒造所」として創業。2017年に現在の「やんばる酒造」に社名が変更されました。地元の天然水を仕込み水にした泡盛は、まろやかな味わいのものも多くあり、地域のお酒として愛されています。
そんなやんばる酒造では、定休日を除き毎日、希望者に酒造所見学を実施(要事前予約)しています。1組ずつ案内してくれるので、お子様連れでも周りを気にせず見学ができます。
発酵の香りや音を体験
やんばる酒造は、許田(きょだ)ICより車で40分ほど。
海沿いの道を走り、県内の清流として知られる田嘉里(たかざと)川近くにあります。
「1組1組を大切におもてなしをしたい」という想いから、見学は午前と午後に各1組(5名まで)。泡盛に詳しいスタッフが、30分ほどをかけて丁寧に案内します。週末は工場が停止しているほか、時期や曜日によっては作業をしていないこともあり、作業工程を見学できる時とできない時があるなど見学内容が異なる場合がありますが、米と黒麹を混ぜる作業場所や、発酵中の樽、蒸留器などを見ることができます。
そして最後はお楽しみの試飲です。車の運転をされる方は残念ながら飲むことはできませんが、仕込み水なら味わうことができますので、ぜひ。
試飲ができなかった場合でもお土産を購入し、リゾートに戻ってからゆっくりと楽しんでください。
写真で紹介!やんばる酒造見学&泡盛ができるまで
泡盛ができるまでには、製麹、もろみ(発酵)、蒸留、熟成の工程があります。
1.製麹
洗米後、筒状の機械で米を蒸し、手前の台で黒麹菌を種付けします。混ぜたものは、ホースで樽へ移動させるとのこと。黒麹を使っているせいか建物全体が黒く、泡盛酒造らしい風情なのも魅力です。
2.もろみ(発酵)
麹菌を付けた米に水と酵母を混ぜ、発酵させます。1つのタンク(樽)に1度にすべて混ぜ込むのが泡盛の特徴。見学では、樽の側面を触らせてもらえたり、上にかぶせた布をとって香りを確かめさせてくれることも。
発酵中の樽は表面温度も温かく、香りもあっさり。発酵を終えた樽は、冷やし始めているので樽の表面温度が冷たく、ツンと鼻を刺激する香りがするなど、発酵期間による違いを体験できます。
3.蒸留
熱を加えていくと70度でエタノールの蒸発が始まります。泡盛では基本的に蒸留は1度だけの「単式蒸留」なので、米の風味や麹の香りがしっかりと残ります。
蒸留後に残ったもろみ粕はもろみ酢として使用できるものの、やんばる酒造では畜産の牧草用肥料に使ってもらっているとのこと。できる限り地域での循環を目指しています。
4.熟成
蒸留直後の泡盛はまだ香りが強く、一定期間熟成させて香りや味をまろやかにします。熟成時には、加水して度数を調整してからの熟成となります。熟成期間は酒造所や商品によって異なりますが、早いもので半年~1年ほど。「古酒」と呼ばれるのは3年以上熟成させたもので、期間が長くなるほどまろやかな味わいになります。
やんばる酒造には22年ものの古酒が大切に貯蔵されているそうで、争いや自然災害などがないからこそ今も、昔のお酒を残しておくことができるとのこと。この古酒の存在こそ、地域が平和に過ごせている証なのだそうです。
5.試飲&お土産
最後は、併設されているショップにて試飲もできます。
この日は、創業当時から続くブランド「まるた」の1年物でアルコール度数20度と30度。そして「まるた30度」を3年熟成させた古酒。さらに2022年度の沖縄県知事賞、ブレンダー・オブ・ザ・イヤーをW受賞した「2021蔵元限定 大山原」(アルコール度数44度)を試飲しました。
1年物の「まるた」はピリリとした刺激があり、かなりの辛口。お酒がそれほど強くない人には少しきついかもしれませんが、お酒好きな方にはたまらない風味です。一方で、古酒になると急にまろやかな味わいに。びっくりするほどに口当たりがマイルドになり、うま味が広がります。
「2021蔵元限定 大山原」はストレートを口に含みながら、沖縄県産の黒砂糖をかじり、ちびちび飲むのがおすすめの飲み方なのだとか。試飲をしながらおすすめの飲み方を聞き、自分好みの泡盛を探してみてください。
人気のお土産は5年物の古酒「KUINA BLACK シルバー 30度」。1合分のほどよいサイズです。店内にはその他にもたくさんの泡盛が揃っています。中でもお土産におすすめなのが、やんばるの森にすむ生き物をラベルに描いた「世界自然遺産登録記念ミニボトル ~やんばるのいきものシリーズ~」。15度と飲みやすい度数ながら、しっかりとした風味を持つ泡盛をブレンドした一品です。全10種類の絵柄があり、このうちの3本を購入するとラベルとは別カットのイラストが描かれた専用箱に入れてもらえますが、あまりの可愛いさに、全絵柄を購入する人も多いそうです。
(店舗紹介)
やんばる酒造
住所:沖縄県国頭郡大宜味村田嘉里417
定休日:日、第2・4土曜日、旧盆、年末年始
見学時間:午前・午後各1組 約30分(試飲時間を含む)
営業時間:9:00 a.m. ~5:00 p.m.
見学人数:1~5名まで
予約:1週間前までに電話にて要予約
料金:1,000円 おみやげ・試飲付
HP:takazato-maruta.jp/tour/
リゾートのテラスで、地元・沖縄の泡盛の楽しみ方を
水割りやストレートで飲むことが多い泡盛ですが、泡盛初心者やお酒に強くない方は、炭酸で割ったり、フルーツを入れてサングリア風にしてみるのもおすすめです。
やんばる酒造でお聞きした、おすすめの飲み方をご紹介。リゾートのお部屋で試してみると、沖縄気分が盛り上がりそうです。
トロピカルフルーツを漬け込んで、サングリア風
最近のおすすめは、今が旬のパイナップルやパッションフルーツ、シークワーサーなどの沖縄トロピカルフルーツを漬け込んでサングリア風にした飲み方。漬け込むフルーツによって味わいや香りが変わるので、その時期に旬のフルーツで色々と試すことができます。1週間ほど付け込むと泡盛とフルーツがしっかり馴染んで良い具合なのですが、2~3日ほどでも大丈夫です。
おすすめは、パイナップルのサングリア。パイナップルの甘みがじんわりと広がりながらも、飲む時に入れたパッションフルーツがスッキリとした味わいにしてくれます。フルーツの甘みで辛さが和らぐので、1年物の泡盛で作ることが多いのですが、古酒を使用するとさらにまろやかに。かなり贅沢な飲み方ですが、たくさん飲まないけれど、少しだけお酒を楽しみたい気分のときにぴったりです。
トロピカルフルーツに加え、ゴーヤやレモンの皮などを入れてもおいしいとのこと。帰りに道の駅や直売所などに寄ってフルーツを購入し、リゾートのお部屋で色々な種類を作ってみてはいかがでしょうか。
初心者向けには、シンプルに炭酸とフルーツ割り
泡盛初心者は炭酸で割り、たっぷりのシークワーサーやライム、パッションフルーツなどを入れてみると飲みやすくなります。1年物の泡盛でもおいしいですが、やはりまろやかに変化した古酒のほうが飲みやすいので、初心者は古酒で試してみるのが良さそうです。
ただ、古酒は年数に比例して高額になっていきます。5年物くらいだとかなり飲みやすいのですが、初めてなので少しだけ試したい場合は、3年物の1合サイズがおすすめです。
お酒好きな人は、仕込み水と同じ軟水で「前割」
泡盛中級者向けにおすすめされたのが、お米の香ばしい香りが立つ「まるた30度古酒」の前割という飲み方。前日に飲みやすい割合で水割りにして一晩寝かせておくと、お酒の甘みとまろやかな口当たりが増して、断然おいしくなります。
この時ポイントなのが、泡盛の仕込み水と同じ軟水で割ること。日本の水道水は軟水なので、海外のミネラルウォーターではなく、水道水や日本のミネラルウォーターを使用すると良いでしょう。
合わせるおつまみは、さっぱりしたものがおすすめ。塩水で蒸した、島魚のマース煮と合わせると泡盛の風味がより一層楽しめます。
また、お米の香ばしい香りがある泡盛なので、炭火で焼いたものとの相性も抜群。リゾートのお部屋は、炭火が難しいで、旬の野菜や県内産のおいしいきのこをオーブンでグリルすると、ついついお酒が進んでしまいそうです。
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沖縄の文化を語るのに外せない泡盛。人とのつながりを大事にする沖縄ならではのものです。
多くの泡盛酒造メーカーでは、家庭用のお酒として地元の方が中心に購入しています。地元で購入されるため那覇での販売店が少なく、本土への出荷は5%ほどという希少な泡盛酒造メーカーもあります。でも最近では自分たちで飲むだけではなく、訪れた人たちにも楽しんでもらうおもてなしのお酒に変わりつつあるのだとか。
ぜひ自分だけのとっておきの泡盛を探してみてください。
日常から離れたリゾートの夜。ゆっくりと語らう時間に、泡盛が華を添えてくれそうです。
※記事中に記載されている見学内容や金額は2023年7月取材時のものです。金額は税込表示となります。
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